| 東京浪漫劇場 > インデックス > 東京湯屋巡礼 > 豊島浴場[豊島] |
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★地方銭湯の趣、ほのぼのとした癒しの湯 都市生活を送っているとどうしても、交通機関を使って便利な場所、と云うのに行きがちになる。 徒歩20分の場所よりも、徒歩5分の最寄り駅の沿線とか。 以前住んでいた町も低い土地ではあったけれど、比較的遠くまで平坦な道が続いていて、自転車でわりあいどこへでも行けたものだが、かつての川べり、文字通り谷底にある今の家に越して来てからはどこへ行くにも本当に坂だらけで、すっかり自転車から遠ざかってしまった。自転車は、町の知っている「点」同士を繋いで自在に移動できる素晴らしい乗り物だと云うのに残念なことだ。 そんなわけで、近いけれども未知な場所に遠足気分で出かけてみようと、今回は豊島浴場へ。商店街を抜けて少し歩いたら、銀色の煙突が見えてきた。 こぢんまりとかわいらしい外観は、まるで地方の銭湯のようだ。写真ではよく見えないが、道路を挟んで正面から眺めれば、低層の屋根の上に立つアンテナがタケコプターみたいで微笑を誘う。 玄関の正面には、鯉の滝のぼりのタイル絵。傘立てに遮られてちゃんと見えないのがもったいない。 脱衣場に入れば、板張りや木目調仕上げの壁に、低めの天井。ほの暗い蛍光灯の光もまた、どこか地方銭湯の趣がある。梁には大きく旧いタイプの扇風機、大黒柱には酉の市で売られる大きな熊手が掲げられている。初めてなのに不思議と心落ち着く、好ましい空間だ。 新しくしたように思える浴室はシンプルで明るい。ペンキ絵は丸山さんの作で、静かな海の向こうに男女湯にまたがった富士山が聳えている。中央の柱部分には白のペンキで「西伊豆」。巡っている地域の関係でそうなるのだが、私の場合、これまで接してきた銭湯のペンキ絵は圧倒的に早川さん、次いで中島さんが多かった。それだけに繊細で静謐な筆致の丸山さんの絵は新鮮に映る。なにより、この銭湯に流れる空気によく合っているように思えた。 この日の湯は澄んだ錆色の「温浴素じっこう」。気泡風呂のほか、寝風呂と「エステジェット」なる強力なジェットバスが並ぶ。 浴室を出ると、さっきまで静かだった脱衣場が何やら賑やか。入る前には存在さえも気づかなかったテレビから、「笑点」のお馴染みのオープニングが流れてくる。最近はこれを銭湯で聞くことが多くなった。そんなことを思いながらふと見れば、さすがは国民的長寿番組、おばあちゃんもおばちゃんも、みんながテレビに釘付け。笑点メンバーの面白可笑しいやりとりに、男湯の脱衣場からも、どっと笑いがおこる。なんだかつくづく素朴でいいなぁ。医院風の長椅子で寛いでいると、番台から「上がられましたよ〜」の声。ちょっと春風亭昇太風味のご主人にお遍路スタンプを戴いて、ほくほくと浴場をあとにしたのだった。 |
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