東京浪漫劇場 > インデックス > 東京湯屋巡礼 > 第九回・雲翠泉[東日暮里]







★商店街の奥に建つ昔気質の銭湯

「日の出」という言葉にはどこか懐かしさのようなものが漂っているらしい。私自身の実感ではないが、昭和30年代を再現したスポットなどでよく見るキーワード、という印象がある。ここ、日の出湯の屋号は、すぐそばにある「日の出商店街」からきているものと思われる。小さいながらも、夕方には活気づく商店街だ。場所は豊島区東池袋。サンシャイン60のふもと、高層ビルの建つ、賑やかな表通りとはうってかわって、今も低層のアパートや民家がひっそりと密集する地域である。歩いていると、不意に踏切の音がして、民家の軒先を一両きりの都電が走り抜けてゆく。そう、ここは都電が走る街だ。付近には、東池袋四丁目停留所がある。サンシャインの裏手に当たるこのあたりは、現在、再開発の計画が進行中である。ひとつの街が丸ごと消滅し、新しい街につくりかえられるという、東京浪漫劇場にしてみればの敵のような計画の標的にされている地域だ。部外者の意見ではあるが、残念に思わずにはいられない。先だっての再開発で、この日の出湯の近くにあった、もうひとつの銭湯「龍の湯」が姿を消した。そんな事情から、今回の湯屋巡礼は、早く行かねばという焦りに背中を押されていた。

脱衣場に一歩入ると、演歌のBGMが迎えてくれる。折り上げ格天井を備えた、典型的な東京型銭湯。外観の割に内部はこれといって特徴はない。早川利光氏の手によるペンキ絵は、浴室つきあたりの壁をいっぱいに使った上で、更に左右の壁に数十cm、画面を延ばして、ワイドに描かれている。男湯は伊豆海岸、女湯は瀬戸内海なのに何故か中央は富士山。日付は平成14年10月21日とある。
浴槽のそばには、お湯を水で埋めすぎないようにと呼びかける札が。ところで銭湯巡りをしていていつも思うのだが、最近は「埋める」ということに関して、寛容になったのではないだろうか。かつては若者が埋めていると古老のような利用者に一言注意を受けたりしたと聞いているし、私自身もそれを見たことがあるが、このごろは銭湯の経営者側も「熱かったら埋めて」なんて云っている。古老もじゃあじゃあ水を出していたりする。「江戸っ子は熱い湯が好き」というような風潮も、今は昔、なのだろうか。ちなみに私は熱くても埋めずに入るようにしている。理由は私が往々にして「ヨソモノ」だからである。ヨソモノの流儀については、町田忍氏の著書『銭湯の謎』にも詳しいが、やはり、銭湯は地域の人々のものであるから、私のように色々な銭湯に入り歩いているようなヨソモノは、勝手に湯温を下げたりしてはいけない、と思うのである。埋めすぎないようにという札は、今でもあるところにはある。私はそんな昔気質の銭湯が好きだ。



【日の出湯 銭湯データ】※2003年1月現在、女湯取材。
玄関 トイレ 洋式
様式 番台式 購買* 入浴道具、飲み物類  
煙突 あり その他  
下足箱    浴室
傘箱    ペンキ絵 早川利光画・瀬戸内海(男湯:伊豆海岸)
脱衣場 タイル絵 なし
ロッカー さくら錠 モザイクタイル画  なし
乱れ籠 あり シャワー あり
体重計* あり  立ちシャワー なし
ドライヤー* おかま型×1台  その他     
マッサージ器 あり ケロリン
ベビーベッド 木製 椅子 プラスチック製
万能台* なし
洗面台 あり 気泡風呂 あり
扇風機(ファン) 扇風機型 ジェットバス あり
休憩スペース ベンチ 座風呂 なし
中庭 あり 薬湯 二日に一度、入浴剤
広告看板   その他 なし
ポスター あり