| 東京浪漫劇場 > インデックス > 東京湯屋巡礼 > 第九回・雲翠泉[東日暮里] |
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★小判型の湯船で癒される 東京都は荒川区。この地域は23区の中でも銭湯が多く、番台式の銭湯も多く残っている地域だ。かの「桜湯」も、かつてはここからそう遠くないところにあった。 さて、私は訪れる以前から、殊更この銭湯には期待を寄せていた。なぜなら、ここには東京型銭湯には珍しい、小判型の湯船があるのである。それに「雲翠泉」という屋号もなんだか神秘的でいい。実はここを知ったのは「桜湯」を知ったのとほぼ同じ頃で、以来、いつかは行きたいと思い続けて幾星霜、本当にこの行動力のなさには我ながら情けなくなってくる。 東日暮里の住宅地を歩いて雲翠泉に到着すると、まずはどっしりと立派な佇まいの建築に圧倒される。このオーラはただものではない。期待大である。 脱衣場に入ると、まず目につくのが、天井からつり下げられたプロペラ型のファン。それも男湯と女湯の中間に一基である。これは旧い銭湯である可能性を示しているのだという。脱衣場内の雰囲気も、期待を裏切ることなくクラシックなもの。ガラス戸越しに見える浴室には、夢にまで見た小判型の浴槽が鎮座している。 浴室に入ると、やはり東京型銭湯とは大分趣が異なっている。小判型はふたつに仕切られ、手前側2/3は浅く、奥の1/3は深くなっている。時間が早かったせいか、湯温はやや熱め。小判型とは別に、浴室の角のスペースには、「宝寿湯」なる薬湯が設けられている。こちらは利用客にも人気のようで、狭い湯船の中は入れ替わり立ち替わり誰かが入っているために大分湯もぬるくなっている。 ここのもうひとつの魅力は、なんといっても男湯・女湯の仕切り部分に貼られた各4点のタイル絵である。女湯の題材は、お伽噺のワンシーン。奥から「舌切雀」「花咲爺」「桃太郎」「浦島太郎」。これこそが風呂を嫌がる子供をなだめて湯に入らせるという、今となっては話に聞くだけになってしまった情景の「現場」である。ちなみに男湯は景勝地のタイル絵が同じく四点。銘はかの桜湯と同じ「峯雲」であった(「鈴榮堂」ではなかった)。 男湯・女湯の境の壁のタイル絵は、近頃では残念なことに立ちシャワーなどの増設によって、その一部が隠れるばかりか、あまつさえ壊されたりしているところも私は知っているが、ここのタイル絵はすべてきれいなままで残っているのが嬉しい限りだ。そのほか、この銭湯の経てきた時代を立証するかのように、凹凸のあるマジョリカタイルもところどころに点在している。 惜しむらくは、中庭が上手に生かされていないところ。きれいに整備して、鯉でも泳がせればきっと映えるに違いないのだが、現在は無造作に鉢植えが置かれているのみである。かつてはきちんと手入れがなされていたようにも見えるだけに尚更残念だ。今後に是非、期待したい。 |
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